梅毒と言えば、昔は死に至ってしまう不治の病として最も恐れられていた病気です。
現代では医療技術の発達などによって命を失うようなことはほとんど無くなりましたが、症状を放置していれば徐々に重症化してしまい、失明など様々な合併症を引き起こす恐れがあります。
初期は自覚症状もほとんど無く、多くの人が気付かないうちに感染を広げてしまっている可能性が指摘されているので油断はできません。
都市部ではここ数年で20倍以上にも患者が増えていると報告されており、決して他人事とは言い切れないのです。

恐ろしい病気から自分の身を守るためにも、梅毒とはどのような病気で、主な症状にはどんなものがあるのかを知っておくことが大切です。
以下に具体的な症状や注意点を挙げるので、覚えておきましょう。

梅毒の症状を徹底解説!

解説する医師

梅毒は日本では古くからその存在が確認されている病気ですが、どんな症状が現れるかについては詳しく知らない人も多いです。
知らないでいると感染していても気づかない可能性が高いので、しっかり症状を知っておく必要があります。
梅毒は梅毒トレポネーマという病原体が原因となって発症する病気で、進行具合に応じて現れる症状が4段階に変化していくという点が特徴です。
初期症状はほとんど自覚症状がないため、なかなか患部を視認することができない女性は特に発見が遅れがちという問題もあります。

自覚症状が現れた段階では、4段階のうち第1段階から第2段階の早期梅毒という状態に進行していることになります。
最も早く現れる症状は、身体の様々な部位に赤みを帯びたしこりが発生することです。
しこりの大きさはだいたい小豆ほどで、現れやすい部位は性別によって異なります。
男性の場合、主に陰茎の様々な部分に発生し、女性であれば大陰唇や小陰唇など膣周辺に発生します。
唇に発生することも多いですが、これは性別に関わらず見られる症状です。
しこりか他のできものかを見分ける方法は痛みやかゆみがあるかどうかで、しこりは痛みなどを感じることはほとんどないため、偶然触れた時に気付くといったケースがほとんどです。

しこりは発生してから2週間から3週間程度で消失してしまい、一見治ったように感じられるのですが潰瘍となって復活します。
潰瘍になると硬性下疳と呼ばれる段階に進行するのですが、潰瘍もしばらくすると自然に治まってしまいます。
しこりや潰瘍の他に、両足の付け根にあるリンパが腫れることも多いです。
これも数週間で自然に治まるのですが、梅毒は放置していても自然に治癒することのない不治の病です。
大人しくなっただけで症状は着実に進行しているため、油断してはいけません。

感染してから約3ヶ月から3年程度経過すると、第2期と呼ばれる段階に入ります。
この時期になると、バラの花のような形のバラ疹と呼ばれる湿疹が現れるようになります。
1センチから2センチほどの湿疹が全身に発生し、赤や紫っぽい色をしているので目立ちますが、バラ疹も痛みを発することはありません。
バラ疹は梅毒の特徴的な症状なので、この時点でようやく感染に気付く人が多いです。

バラ疹が消えると、次は梅毒性丘疹が発生します。
バラ疹よりも小さな湿疹で同じように全身に発生し、色は白っぽく硬さを持っています。
梅毒性丘疹と同時に扁平コンジローマが発生することもあり、エンドウ豆ほどの大きさで柔らかい丘疹です。
爛れて浸出液が出ることもあり、湿っているので他のコンジローマとは明らかに異なります。
この他、掌や足の裏に湿疹が発生すると梅毒性乾癬と呼ばれ、ぽろぽろとした乾燥した皮が付着するのが特徴です。
円形脱毛や口内炎、扁桃腺炎や全身のリンパの腫れや発熱、食欲不振に関節痛などありとあらゆる症状が発生するので、見過ごすことなく病院を受診する必要があります。

4段階のうち第3段階および第4段階にかけては晩期梅毒と呼ばれ、初期の段階で適切な対応を行わなかった場合に進行します。
第3段階の症状の特徴は、ゴム腫と呼ばれるものです。
まるでゴムのような弾力のある腫瘍が皮膚だけでなく筋肉や骨、内臓などに発生します。
ゴム腫ができると身体の組織は徐々に破壊されるため、鼻が落ちるといった恐ろしい症状も起こります。
ゴム腫が鼻の骨にできることで、鼻を支えている骨が陥没してしまうためです。

感染から約10年ほど経過して最後の第4段階にまで至ると、いよいよ末期となります。
心臓や脳など重要な組織が破壊されるため、失明したり言語障害や記憶障害など重篤な症状が起こります。
命を落としてしまうことも多く、昔はこの段階に達してしまう人が多かったために不治の病として恐れられてきました。
梅毒は自覚症状が無いうえに時間が経過するほど症状が悪化し、自然治癒することもありません。
現代では鼻が落ちたり失明するなど恐ろしい症状まで進行することはありませんが、違和感があればできるだけ早く受診するようにしましょう。

梅毒は自然治癒する?しない?

風邪や怪我など、症状の軽いものは放置していても自然治癒することがありますが、残念ながら梅毒の病原体である梅毒トレポネーマは自然治癒することはあり得ません
感染して症状が発生した場合、適切な治療を開始しなければどんどん病気が進行し、最悪のケースでは命を落とす可能性もあります。
しかし、インターネットなどには梅毒の症状が現れたけど自然治癒したという書き込みをしている人も一定数います。
こういった情報を見ると、梅毒は放置していても自然に治るんだと誤解していつまでも病院に行かずにいると、症状が悪化して失明など重い症状に進行してしまうため注意が必要です。

梅毒に罹患してしまった場合、自然治癒するようなことはまずありません。
梅毒は4段階の症状に分かれていますが、梅毒トレポネーマの進行具合によって症状が現れたり消失したりします。
早期である第2段階と第3段階の間には必ず潜伏期間を挟むため、その時期に入った場合しこりや湿疹などの症状が消えてしまいます。
自然治癒したと言っている人は、この潜伏期間に入って症状が治まったことを治癒したと誤解している可能性が高いです。

潜伏期間の長さがどれくらいに及ぶかは個人差が大きく、短くても数年、長ければ10年以上にもわたって何の症状も現れなくなります。
こんなにも長期間にわたって症状が現れなければ、梅毒かもと不安に感じていた人が安心してしまう可能性も十分にあるでしょう。
しかし潜伏期間はあくまでも一時的に症状が落ち着いているというだけで、数年から10年ほどで確実に症状が進行していきます。
潜伏期を経て第3段階から第4段階へと進行すれば、第2段階とは比べ物にならないほど重篤な症状になってしまいます。

古くから不治の病として梅毒が恐れられてきたことを考えれば、自然治癒するとは到底考えられません。
現代ではさすがにゴム腫によって鼻が落ちてしまうような症状にまで進行することはありませんが、重篤な症状を防ぐためには第2段階までに正しい治療を行うことが条件になります。
命を落としてしまう心配はありませんが、放置していれば失明などゴム腫が発生する第3段階に進行するケースも十分にあり得ます。
自然治癒したと思い込んで放置していると、梅毒の進行を助けてしまうことになるのでくれぐれも注意しておきましょう。

また、これまで特に治療を行った記憶もないのに、梅毒トレポネーマに感染して既に体内に抗体ができていると判明するケースもあります。
知らないうちに感染して知らないうちに完治している場合、やはり自然治癒したのだと考えてしまいがちですが、決してそうではありません。
私たちは風邪をひくなど他の病気に罹患した際に治療を行いますが、この時に意図せず梅毒トレポネーマに対して有効な薬を使用しているケースもあります。
自分で梅毒にかかっていると気付いていなくても、他の病気の治療で知らないうちに治癒させていることになります。

自然治癒したと考えられる人の場合、このような流れでいつの間にか完治している可能性が高いです。
これは患者本人の免疫力などには関係なく、あくまでも偶然に治癒したということなので、やはり自然治癒とは言えません。
しかも梅毒は一度抗体ができたとしても何度も感染する可能性があるため、人によっては何度も症状が現れてしまうこともあります。
最初に自然に治ったと誤解して次の感染時にも放置していると、今度は偶然に治ることもなく症状がどんどん悪化してしまう可能性が高いです。

いくら症状が落ち着いたように見えても梅毒が自然に治癒することはほぼ無いということを理解し、自覚症状が現れた段階ですぐに治療を開始することが重要です。
あくまでも潜伏期間や偶然の治療で症状が治まっただけで、梅毒トレポネーマ自体はずっと体内で活動していることを覚えておきましょう。

梅毒で失明することがある!

目をおさえる女性

梅毒には様々な合併症が存在しますが、その中でも恐ろしい症状の一つとして知られているのが失明です。
梅毒がブドウ膜炎という症状を引き起こし、それが悪化することで視神経に悪影響を及ぼして失明してしまいます。
全ての患者が視神経に異常をきたすわけではありませんが、病気が進行するにしたがってそのリスクは高まっていくので注意が必要です。

失明を引き起こす可能性のあるブドウ膜炎は、4段階ある症状のうち第2段階で発生します。
ブドウ膜炎という病名はあまりポピュラーではありませんが、梅毒に関しては関わりが大きいので知っておきましょう。
ブドウ膜というのは、眼の中にある虹彩や毛様体、脈絡網など各器官の総称のことです。
虹彩は眼に入ってくる紫外線をカットして組織を守るための器官で、毛様体はレンズの役割を果たす水晶体の厚さを調整する筋肉になります。
脈絡網は虹彩や毛様体などの各器官に酸素や栄養などを運ぶため、血管や神経などが通っている膜のことです。
これらが集まってブドウ膜を形成しており、梅毒によってこの部分に炎症が起きるとブドウ膜炎となります。

梅毒によって眼の組織に炎症が起きれば、当然深刻なダメージが与えられるため視力に影響を及ぼします。
炎症が酷くなればなるほどそのリスクは高く、完全に失明してしまう可能性が高いです。
失明まではしなくても著しく視力が落ちてしまうケースはかなり多いので、急に眼が悪くなってきた人で梅毒の心当たりがある場合は注意しておきましょう。

視力が悪くなった場合、多くの人が眼科を受診します。
困ったことに、視力の低下が梅毒によって引き起こされているのか、それとも他の病気によって起きているのかを判断するのは眼科医でも非常に難しいです。
梅毒によるブドウ膜炎だと明確に判断できる特徴などは存在しないため、眼科を受診したとしてもすぐに梅毒が原因だと診断されません。
仮に自覚症状が全く出ていない状態で視力低下が先に起こった場合、眼科医が梅毒を疑うのは非常に難しいでしょう。

梅毒が原因になっていると診断されなければ、当然ながらいくら視力を回復させようと試行錯誤しても無駄な徒労に終わります。
梅毒自体もそのまま感染が継続してしまうので、せっかく病気を発見するチャンスを見逃してしまうことになります。
梅毒がそのまま進行すれば、視力の低下もどんどん悪化してしまい、最終的に失明してしまう可能性もあるでしょう。
眼科医が梅毒との関連性に気付いてくれるのが理想的なのですが、他に症状が無ければ自主的に梅毒を疑うことはまずありません。

早めに梅毒だと気付くためにも、心当たりがある場合は眼科医に自分から申告することが大切です。
恥ずかしくて言い出しにくいと感じる人も多いでしょうが、思い切って相談しなければ失明というあまりに恐ろしい症状が現れる可能性があります。
梅毒による視力低下や失明は決して珍しいものではなく、慣れている眼科医も多いので恥ずかしがる必要はありません。
それよりも自分の身体の方が大切なので、正直に相談するようにしましょう。

梅毒が不治の病として恐れられていたのは昔の話で、適切に対処すれば十分に完治させることができます。
失明してしまえば視力を回復させるのは非常に難しいので、そうなる前に行動することが重要となります。
特に視力への影響は第2段階という比較的早い段階で起こってしまうため、放置していれば時間の経過とともに重症化してしまう可能性は非常に高いです。
バラ疹やしこり、潰瘍などが現れるのと同時期に視力の低下が起きた場合は、自分で梅毒を疑って早めに眼科を受診するようにしましょう。
稀に一切の症状が起きず、視力低下だけが起きる無症候梅毒というケースもあるので、他の症状が無いからと言って梅毒の可能性が無いとは言い切れません。
こういった情報を頭に入れておき、常に意識することが大切です。